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笹幸恵
2022.2.21 19:34皇室

『クライテリオン』3月号「皇室論」座談会

『クライテリオン』3月号が、
特集で大きく皇室のことを扱っている。

藤井聡氏、施光恒氏、柴山桂太氏、浜崎洋介氏の
座談会は、皇室について考える視座がじつに多く
提供され、非常に読み応えがあった。
とくに最後の「天皇と軍隊」のやりとりは
考えさせられ、藤井氏が指摘するように、
まさしく「皇室を考えることは日本全て、
その歴史と共に考える」ことだと思う。

が、前半は猛烈に違和感を覚えた。
以下、主な発言。

藤井氏
「二千年以上続いた男系男子の形式」

施氏
「女系天皇を許せば、皇位簒奪を狙う勢力が現れる」
「一二六代のうち一例もない女系天皇は『天皇』と
呼べるかも疑わしい」

浜崎氏
「二千年以上続いてきたといわれる一つの歴史を
取り返しのつかない形で毀損してしまうのではないか」

藤井氏
「可能な限り男系男子の男系論の持続を考える。
もはやこれまでとなった時には女系容認をせざるを得ない」

今日の高森先生のブログ
https://www.gosen-dojo.com/blog/33901/
では、男系男子の継承が「我が国古来の伝統」では
ないことが詳述されている。
「二千年以上続いてきた男系」というのは、
そもそも議論の前提にはならない。

また「取り返しがつかない」「一例もない」というのも
首をかしげる。
「元明天皇ー元正天皇」は明らかに女系継承である。
男系原理主義者は、この場合は父親が草壁皇子で、
父方を辿れば天武天皇に行き着く、だから男系だ!
というのかもしれないが、あまりにこじつけが過ぎる。
天皇という地位より、男系という血統(当時は
認識されていなかったY染色体)が尊いとでも?
歴史に現代の価値基準を持ち込むな、というのは、
歴史を見る際の大原則のはずだが。
素直に見れば、元正天皇は女系天皇。

「皇位簒奪」については、具体的には
「様々な外国勢力、宗教勢力、政治勢力が
女性の天皇の夫になろうと暗躍してくるのでは
ないでしょうか」と施氏は述べている。
この点、男系原理主義者の主張そのままだ。
なぜ男が天皇だとそのリスクが低くて、
女が天皇だと皇位が簒奪されるという話になるのか。
施氏は、その理由として、
「家は男が継ぐものだ」という東アジアの
社会通念を挙げているが、これはあまりに杓子定規。
日本は、男の跡継ぎがいない場合、
その家の娘が婿養子をとって稼業を続けてきた。
戦後、名字が変わった元兵士を私は何人も知っている。
みーんな婿養子に行き、その家の稼業に汗水流している。
男とか女というのは、「家」の前には臨機応変、
このあたりが日本人の柔軟なところではないのか。

「もはやこれまでとなったときには女系容認」発言も、
認識が大いに異なっていると思わざるを得ない。
今がもう「待ったなし」のはずだが。
悠仁さまがいらっしゃると思っているのかもしれないが、
結婚して、出産して、それが男児でなければ
もうアウトだ。
このあたりのリアリティが決定的に欠けている。

それとも、旧宮家の男系男子の子孫を養子にする?
しかし「門地による差別」は明白な憲法違反である。
それでも血統を重視する?
さかのぼれば日本国中に「男系男子」はいる。
血統を重視したって正当性は担保されない。
この現実は、座談会では触れられていない。

しかし話題が一巡したところで、柴山氏がさらりと
「男系男子継承も、大陸文化を取り入れたものですね」
と、語っている。
ここ、ここですよ!

男系か、双系かということは、
大陸の儒教的な価値観を支持するか、
それとも日本古来の、
性別にとらわれすぎない知恵を支持するか、
という話である。

そこが、まずもって大事な論点だ。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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